消費生活相談員の権限強化及び待遇改善を求める要望書

  1. 我が国においては、大半の地方自治体において消費生活相談センターが設置され、官民の消費者問題・消費者被害事件の相談、仲介斡旋行為を行い、市民生活の安全・安心の確保を果たす上で大きな役割を果たしてきている。また今般、政府が設置している多重債務者対策本部による「多重債務問題改善プログラム」により、消費生活相談員には多重債務問題に関する相談への対応が求められており、消費生活相談員に期待される役割は非常に大きいといわなければならない。こうした重大な役割を担う消費生活相談員には十分な権限が必要であるとともに、種々の専門分野について相当の知識・経験を有する多数の消費生活相談員が求められている。

  2. (1) しかるに現在、消費生活相談員は、アルバイトなどと同様、嘱託雇用等であるため、その報酬は職責に比してきわめて低額であり、また、長時間の残業が恒常化しているが超過勤務手当はほとんどの職場で支払われていない。しかも、雇用年限が1年更新や5年の雇い止め等、短期に定められているため、知識・経験に富んだ消費生活相談員がそのキャリアの故に職を離れざるを得ない。

    (2) また、大半の地方自治体では消費生活相談員の研修予算が乏しいために消費生活相談員に研修を受ける機会が得られず、自費で遠方の研修に参加せざるを得ない。
    さらに、多くの消費生活相談窓口においては増加する相談需要に対応しきれない状態が恒常化しており、この状況で「丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う」という「多重債務問題改善プログラム」で求められる相談を行えば、殺到する相談に対応できず、消費生活相談窓口で多重債務相談を行う体制を整えることはとうてい不可能であるといわざるを得ない。

  3. 一方、消費生活相談員が債務整理事案に介入しても、取立停止効はなく、多重債務者が今後の方策について落ち着いて考えることができない状態にある。
    また貸金業者が、多重債務問題に関する斡旋を、個人情報保護法を口実に拒否することが多く、地方自治体による多重債務問題の解決が不当に阻害されている。
    さらに、地方自治体での相談から特定調停申立に至った場合、消費生活相談員が調停手続に関与して適切な解決を図る必要性が高いが、消費生活相談員は特定調停における付添人の資格が明文化されておらず、手続に関与できない場合も少なくない。

  4. そこで我々は、
    (1)消費生活相談員の権限強化として、金融庁等関係諸団体に対し、
    @貸金業法21条1項6号が定める通知に「地方自治体からの相談受理通知」を追加し、取立停止効を認めること
    A多重債務相談にかかわる地方自治体の斡旋において、貸金業者が個人情報保護法を口実とした斡旋拒否を行わないよう指導を徹底すること
    B特定調停への地方自治体職員・相談員の付添資格を明文化すること

    (2) 消費生活相談員の待遇改善として、各地方自治体に対し、
    @消費生活相談員を消費生活相談職種の正規職員として雇用し、相談業務を外部委託している場合にはこれを解消すること
    A上記正規職員としての雇用が実現されるまでの間、
      T 雇用期間制限を撤廃すること
      U 相談員の報酬の最低限を地方自治体の新入職員の給与水準とし、能力に応じた昇給を行うこと。
         また、各種保険等を付けること(健康保険・失業保険・年金等)
      V 勤務実態に基づいた超過勤務手当を支給すること
    B研修予算を確保して研修の機会を保障すること
    C消費生活相談員の人員を大幅に増加するとともに、相談受付件数のみならず相談業務の具体的な効果を総合的に評価する査定方式を導入することを強く要望するものである。

2008年1月12日
全国クレジット・サラ金問題対策協議会