生活保護の支援活動及びネットワーク構築の強化に向けた宣言

悲劇は繰り返されました。昨年5月の北九州市門司区における餓死事件に引き続き、今年7月、同市小倉北区において、生活保護行政に関わる死亡者が出てしまいました。今年4月に保護辞退届に基づいて生活保護を廃止された51歳の男性が、保護廃止から約3か月後、一部ミイラ化した状態で孤独死しているのが発見されたのです。男性は、自らの日記に、「せっかく頑張ろうと思っていた矢先、切りやがった。生活困窮者ははよ死ねってことか」などと書き綴り、日記の最後には「オニギリ食いたーい。二五日米食ってない」と記していました。

北九州市で続く悲劇の背景には、日本に貧困が広がっている現実、それにもかかわらず生活保護を含む社会保障費の削減が財政難を理由に強行されている現実、そして、生活保護の運用が最後のセーフティネットとしての役割を十分果たしていない現実があります。「生活保護110番」などの取り組みから、全国各地の福祉事務所において、生活保護の申請が違法に拒否されたり、不当な指導指示に苦しめられたりする被害が日常的に生じている実態が明らかとなっています。不当な指導指示によって精神的に追い込み、保護廃止届を書かせ、保護を廃止してしまうケースも見受けられます。また、このような運用レベルの問題を超えて、生活保護基準そのものの切り下げも進められています。すでに老齢加算と母子加算の削減・廃止が強行され、今後は保護基準の見直しも予定されています。孤独死は、決して北九州市だけの問題ではなく、孤独死の予備軍が全国各地にいると考えるべきです。そして、孤独死が発生する危険性は確実に高まっているのです。

私たちは、すでに多重債務者の債務整理や刑事事件の弁護活動などの各自の様々な活動において、問題解決のためにその人の生活自体を立て直す必要があるケースに直面しています。日々の活動のなかで意識的に貧困を見出し、支援の手をさしのべる機会は必ずあるはずです。とりわけ、多重債務の相談活動は、生活保護を活用して生活に困窮した人たちの生活再建を実現する貴重な機会です。その機会を逃さずに支援の手を差し伸べることが必要です。すでにその実践を積み重ねている法律家や支援者もいます。この支援の取り組みをさらに広げていかなければなりません。北九州市の事例からも明らかなように、支援の必要な人たちが助けを求めることができる状況にあるとは限らないのです。踏みつけられて弱った人たちは、失意のもとに声をあげる気力さえ失っています。全国各地に広範な支援のネットワークを構築し、支援の実践を積み重ねながら、絶望感に打ちのめされて座り込んでしまった人たちにも活動を知ってもらい、再び立ち上がって歩き出す勇気を与え、支援していけるような全国的な大きな運動が必要です。

私たちは、国及び地方公共団体に対し、憲法25条によって保障された生存権の実現を求めていきます。すべての人が人間らしい生活を送ることができる社会に向けて、生存権を侵害する生活保護制度の改悪には強く反対し、生活保護がその本来の役割を果たすことができるよう現在の運用を改善させていきます。そのために、各自が以下の活動に取り組み、支援のネットワークをさらに広げ、お互いの知識や経験を交流して連携を強めながら、生活困窮者の生活再建を積極的に支援していくことを宣言します。

  • 多重債務の相談において相談者が最低生活費を下回る生活をしていないか確認します。
  • 最低生活費以下の生活を送っている人に対して生活保護申請の助言と支援をします。
  • 生活保護の申請等を支援するネットワークに積極的に参加します。


2007年9月30日 第4分科会提案
第27回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in滋賀 参加者一同