病的賭博と多重債務 法的債務整理だけでは解決を遅らせる

クレサラ被害者のなかには、ギャンブルが原因で多重債務におちいった人たちも見られる。ギャンブルがらみの借金については、「遊び金ほしさにサラ金などから借金したのは自業自得」といった見方が、世間にはある。しかし借金を重ねても、家族が生活費に困っても、ヤミ金から脅されてもギャンブルを止められない状態は、れっきとした病気である。

  1. 多種多様な人が病的賭博で苦しんでいる

    では、病的賭博を患うのはどういった人なのだろうか?その大半は、けして反社会的な人たちではない。回復の場である自助グループ(ギャンブラーズ・アノニマス)に登場する人からすると、一流大学を卒業した会社員や公務員から引きこもり系の若者まで職業や学歴も様々であれば、年齢も様々、男性も女性も、と極めて多種多様な人たちである。なかには精神疾患をわずらう人もいれば、アルコールや薬物への依存の人もいれば、発達障がいや知的障がいの人、子どものときの虐待に苦しむ人もいる。ほかに難病を抱えた人もいれば、賭博以外はさほど問題はない人もいる。

    賭博に起因する借金で生活が破綻し、周りの人、とくに家族の人生までまきこんで不幸な状態を作りだしても、まだ賭博を続けるのは、本人が意図的に家族を苦しめているのではない。止めようと思ってもブレーキのきかないコントロール障害になっているからである。

  2. 病的賭博からは回復できる

    このコントロール障害は、家族がそれについての正しい知識を得て、ギャンブラー本人との接し方、態度を変えていき、家族が健康になり、本人が回復の場につながれば賭博を止め続け、生活を立て直していける、回復可能な病気である。

    そのなかで、借金の肩代わりをしないというのは、重要なことである。ギャンブラーにとって、サラ金など(借り入れ限度額=自分の自由に使えるお金)がいつしか財布感覚になってしまう。周りが借金を一括返済すれば、また限度額が上がり、ギャンブルの資金が増えるだけである。

  3. 相談者は、病気の理解を

    ギャンブル問題で苦しむ家族や本人はまず、借金整理の相談にやってくる。賭博の問題を抱える人は、精神科医やこころの健康の相談に行くよりは、まず借金の相談で被害者の会や弁護士/司法書士事務所、行政の相談窓口を訪れる場合が多い。相談にあたる人はこの病気について理解し、それは家族を巻き込んだ病気であり、回復の場がギャンブラー本人にも、家族にも用意されているという事実を伝える必要性があろう。ギャンブルにはまる人は「遊びに耽る悪い人」という見方から、回復の可能性のある「病気を患う人」という視点の転換をつよくお願いしたい。

さらにはギャブル産業界を含めた社会全体にたいしても、賭博問題の理解を強く望むものである。

2007年9月30日 第14分科会提案
第27回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in滋賀 参加者一同